教育ガイドライン

ガイドライン作成の必要性と目的

  1. 昨今の区域麻酔領域における普及と技術発展から、教育ガイドライン作成の必要性が高まってきた。これを受け、日本区域麻酔学会による認定医育成のための教育ガイドラインを策定した。
  2. 本ガイドラインは、区域麻酔の実施に必要な知識・技術を網羅し、研修を受ける医師達自身でのチェック項目となり、さらに上級医の指導の目安となることを目指した。

ガイドラインの特徴

  1. 上級医が、教育ガイドラインに則って日本区域麻酔学会認定医を目指す医師に対して、日常臨床の中で評価するシステムを採用している。
  2. 日本麻酔科学会教育ガイドラインとの整合性を確認しつつ、基礎的なことから、深い理解を必要とする事柄および手技に至るまでをまとめた。
  3. 各施設における区域麻酔の実践に多少の差異があっても,医師が共通して利用できる一般的な教育ガイドラインとなるべく作成した。
  4. 各レベルの手技については、まず指導者の下で施行し、最終的に独自で施行でき,かつ指導できるようになることを念頭に置いている。

特記事項

  • (L-1):初期研修レベルで修得すること
  • (L-2):区域麻酔に従事し2年程度で修得すること
  • (L-3):日本区域麻酔学会認定医となるまでに修得すること
  • 本ガイドラインは日本区域麻酔学会理事会に諮って策定されたものである。

2015年4月

日本区域麻酔学会教育委員会

I. 関連領域と役割

A. 区域麻酔の役割

  • 麻酔や疼痛管理、ペインクリニックなどの関連領域とのかかわりとその役割について理解する.(L-1)
  • 手術中の鎮痛法について理解する.(L-2)
  • 急性痛管理について理解する.(L-2)
  • 術後痛管理について理解する.(L-2)
  • 慢性痛管理について理解する.(L-2)
  • がん性痛管理について理解する.(L-2)
  • 緩和ケアの概略について説明できる.(L-2)
  • 院内の急性痛,慢性痛,がん性痛を評価しアドバイスできる.(L-3)
  • 区域麻酔に関する感染対策をアドバイスできる.(L-3)
  • 各部門と連携して治療ができる.(L-3)

B. 医療倫理

  • 医の倫理規定を遵守する.(L-1)
  • インフォームド・コンセントについて説明できる.(L-1)
  • 医療情報を適切に与えることができ,文章で同意を得ることができる.(L-2)
  • 区域麻酔の適応と限界について説明できる.(L-2)
  • 区域麻酔の治療目的について説明できる.(L-2)

C. リスクマネジメント

  • 医療事故予防対策を立案し,実行できる.(L-3)
  • 区域麻酔に関する合併症対策を立案し,実行できる.(L-3)
  • 区域麻酔に関する感染対策を立案し,実行できる.(L-3)

D. 救急蘇生

  • 一次救命処置 (basic life support, BLS) が実施できる.(L-1)
  • 二次救命処置 (advanced life support, ALS) が実施できる.(L-2)

E. がん性痛治療

  • 「WHOがん疼痛治療指針」について説明できる.(L-1)

II. 区域麻酔施行に必要な基礎知識

A. 解剖

  • 体表解剖について説明できる.(L-1)
  • 神経解剖について説明できる.(L-1)
  • 局所解剖
    • 脊髄くも膜下麻酔施行に必要な腰椎レベルでの解剖知識を有する.(L-1)
    • 硬膜外麻酔施行に必要な頚椎・胸椎・腰椎・仙骨レベルでの解剖知識を有する.(L-1)
    • 各種神経ブロック施行に必要な神経および周辺構造との関係を含めた解剖知識を有する.(L-2)

B. 物理学

  • 神経刺激伝導における知覚神経と運動神経の違いを含め説明できる. (L-1)
  • 神経刺激装置による筋収縮誘発のメカニズムについて説明できる. (L-2)
  • 超音波診断装置による画像描出の理論と各種アーチファクトや超音波特性について説明ができる. (L-2)

C. 生理学

  • 痛みの定義を説明できる.(L-1)
  • 痛覚の神経機構を説明できる.(L-1)
  • 区域麻酔の呼吸・循環に与える影響を説明できる.(L-1)
  • 区域麻酔の運動機能に与える影響を説明できる.(L-1)
  • 神経刺激と筋収縮のメカニズムについて説明できる.(L-1)
  • 区域麻酔の免疫機能に与える影響を説明できる.(L-1)
  • 小児・妊婦・加齢に伴う生理的変化について説明できる.(L-2)

D. 局所麻酔薬

  • 薬理作用
    • エステル型とアミド型の違いを説明できる.(L-1)
    • 局所麻酔薬の分類法について説明できる.(L-1)
    • 局所麻酔薬の作用機序を説明できる.(L-1)
    • 局所麻酔薬の塩基型とイオン型について説明できる.(L-2)
    • 局所麻酔薬の吸収・代謝・排泄について説明できる.(L-2)
    • 局所麻酔薬の作用強度, 効果発現時間,作用持続時間について説明できる.(L-2)
    • 局所麻酔薬の毒性を説明できる.(L-1)
    • 局所麻酔薬への添加によって持続時間に影響を及ぼす薬品とその効果について説明できる.(L-3)
    • 注入部位別のブロックの種類,目的に応じた局所麻酔薬と,その濃度や量の選択ができる.(L-3)
  • 局所麻酔薬中毒
    • 局所麻酔薬の極量について説明できる.(L-1)
    • アレルギー反応との違いが説明できる.(L-1)
    • 合併症である血管内注入を説明できる.(L-2)
    • 局所麻酔薬の血管内注入を避ける手段と,生じた場合の処置について説明できる.(L-2)
    • 局所麻酔薬中毒の診断と治療(Lipid Rescueを含む)ができる.(L-3)

E. 器具

  1. ブロック針
    • 区域麻酔に用いる針の種類と特徴について説明出来る.(L-2)
      • 形状
      • 神経刺激針
      • 超音波指向性針
  2. カテーテル
    • 区域麻酔に用いるカテーテルの種類と特徴について説明出来る.(L-2)
      • 単孔/多孔
      • through needle / over needle
      • 神経刺激カテーテル
      • 超音波指向性カテーテル
  3. 神経刺激装置
    • 神経刺激装置による神経同定法について説明できる.(L-2)
    • 神経刺激装置の設定(パルス幅、刺激頻度、出力)を目的に応じて調節できる.(L-3)
    • 神経刺激装置を用いて神経同定を適切に実施できる.(L-3)
    • 病態に伴う神経刺激装置の問題点について説明できる.(L-3)
  4. 超音波診断装置
    • 超音波診断装置の各種設定(周波数、ゲイン、深度、フォーカス)を適切に調整できる.(L-2)
    • 適切なプローブを選択できる.(L-2)
    • 適切なプローブ走査法について説明できる.(L-2)
    • 超音波診断装置を用いて主要部位での神経及び周辺構造の描出ができる.(L-2)
    • 平行法及び交差法を用いた適切な針の穿刺ができる.(L-2)
    • 超音波診断装置の画像描出原理について説明できる.(L-3)
    • アーチファクトについて説明ができる.(L-2)
  5. 透視
    • X線透視下神経ブロックの適応および利点・欠点を説明できる.(L-2)
    • CTガイド下神経ブロックの適応および利点・欠点を説明できる.(L-2)
  6. 持続注入ポンプ
    • PCAポンプの概念について説明できる.(L-2)
    • ディスポーザブルおよび電動式ポンプの特徴について説明できる.(L-2)
  7. その他
    • 以下の用語について説明できる.(L-3)
      • 穿刺ガイド
      • ニードルナビゲーションシステム
      • 注入圧測定

III. 神経ブロック総論

  • 神経ブロックに必要な解剖学的構造を理解している.(L-2)
  • 神経ブロックに必要なX線・CT・MRI画像診断を理解している.(L-2)
  • 神経ブロックに必要な超音波画像診断を理解している.(L-2)
  • 神経ブロックの適応と禁忌について説明できる.(L-2)
  • 神経ブロックに用いる手技について説明できる.(L-2)
  • 神経ブロックの単回投与法と持続法について説明できる.(L-2)
  • 神経ブロックの合併症およびその対処法について説明できる.(L-2)
  • 神経ブロックと麻酔・鎮静薬との相互作用を説明できる.(L-2)
  • 神経ブロック施行中の鎮静の利点・欠点を説明できる.(L-2)
  • ブラインド (ランドマーク) 法の利点・欠点を説明できる.(L-3)
  • 透視下法の利点・欠点を説明できる.(L-3)
  • 超音波ガイド下法の利点・欠点を説明できる.(L-3)
  • 周術期神経麻痺の原因・特徴・予後について説明できる.(L-3)

A. 上肢の神経叢・神経ブロック

  1. 腕神経叢ブロック
    • 腕神経叢の解剖を説明できる.(L-1)
    • 腕神経叢ブロックのアプローチ方法について列挙できる.(L-2)
    • 斜角筋間アプローチの特徴について説明できる.(L-2)
    • 鎖骨上アプローチの特徴について説明できる.(L-2)
    • 鎖骨下アプローチの特徴について説明できる.(L-2)
    • 腋窩アプローチの特徴について説明できる.(L-2)
    • 腕神経叢ブロックの適応・禁忌・合併症・手技について説明できる.(L-3)
    • 手術部位にあわせた,適切なアプローチを選択できる(持続ブロックも含む).(L-3)
  2. 上肢の腕神経叢終末枝ブロック・レスキューブロック
    • 肩甲上神経、腋窩神経、橈骨神経、正中神経、尺骨神経、筋皮神経の走行と支配領域及び筋支配について説明できる.(L-2)
    • 上記の各神経を超音波を用いて同定し、必要に応じて適切な末梢枝ブロック・レスキューブロックが実施できる.(L-3)

B. 下肢の神経叢・神経ブロック

  • 腰神経叢および仙骨神経叢の解剖およびこれらから分枝する下肢に分布する神経の走行ならびに筋支配・支配領域について説明できる.(L-2)
  • 以下に挙げる各神経ブロックを理解し、手術部位に合わせた適切な組み合わせを選択できる(持続ブロックも含む).(L-3)
  1. 腰神経叢ブロック
    • 腰神経叢ブロックの適応,手技,禁忌,合併症について説明できる.(L-3)
  2. 大腿神経ブロック・伏在神経ブロック
    • 大腿神経ブロック・伏在神経ブロックの適応,手技,禁忌,合併症について説明できる.(L-3)
  3. 外側大腿皮神経ブロック
    • 外側大腿皮神経ブロックの適応,手技,禁忌,合併症について説明できる.(L-3)
  4. 閉鎖神経ブロック
    • 閉鎖神経ブロックの適応,手技,禁忌,合併症について説明できる.(L-3)
  5. 坐骨神経ブロック
    • 坐骨神経ブロックの適応,手技,禁忌,合併症について説明できる.(L-3)
  6. 足関節の神経ブロック
    • 足関節ブロックの適応,手技,禁忌,合併症について説明できる.(L-3)
  7. 仙腸関節ブロック
    • 仙腸関節ブロックの適応,手技,禁忌,合併症について説明できる.(L-3)
  8. 腰椎椎間関節ブロック
    • 腰椎椎間ブロックの適応,手技,禁忌,合併症について説明できる.(L-3)

C. 体幹の神経ブロック

  • 胸神経ならびに肋間神経の解剖及び走行について理解し、体幹に分布する神経ならびに支配領域について説明できる.(L-2)
  • 以下に挙げる各神経ブロックを理解し、手術部位に合わせた適切な組み合わせを選択できる(持続ブロックも含む).(L-3)
  1. 胸部傍脊椎神経ブロック
    • 胸部傍脊椎神経ブロックの適応,手技,禁忌,合併症について説明できる.(L-3)
  2. 肋間神経ブロック
    • 肋間神経ブロックの適応,手技,禁忌,合併症について説明できる. (L-3)
  3. 胸筋神経ブロック
    • 胸筋神経ブロックの適応,手技,禁忌,合併症について説明できる. (L-3)
  4. 腹直筋鞘ブロック
    • 腹直筋鞘ブロックの適応,手技,禁忌,合併症について説明できる. (L-3)
  5. 腹横筋膜面ブロック
    • 腹横筋膜面ブロックの適応,手技,禁忌,合併症について説明できる. (L-3)
  6. 腸骨鼠径・腸骨下腹神経ブロック
    • 腸骨鼠径・腸骨下腹神経ブロックの適応,手技,禁忌,合併症について説明できる. (L-3)

D. 頭頚部の神経ブロック

  1. 星状神経節ブロック
    • 星状神経節の解剖を説明できる.(L-1)
    • 星状神経節ブロック施行のための正確な体位をとれる.(L-2)
    • 星状神経節ブロックの適応,手技,禁忌,合併症を説明できる.(L-3)
    • 星状神経節ブロックを実施できる(ランドマーク・超音波ガイド下法).(L-3)
  2. 三叉神経ブロック(上顎神経,下顎神経)
    • 三叉神経の解剖・走行を説明できる.(L-1)
    • 痛みが存在する部位により,適切な三叉神経ブロックを選択できる.(L-3)
    • 適応・禁忌・合併症・手技について説明できる.(L-3)
  3. 三叉神経の終末知覚枝ブロック(眼窩上神経,眼窩下神経,おとがい神経)
    • 適応・禁忌・合併症・手技について説明できる.(L-3)
  4. 頸神経叢ブロック
    • 適応・禁忌・合併症・手技について説明できる.(L-3)
  5. 後頭神経ブロック
    • 適応・禁忌・合併症・手技について説明できる.(L-3)
  6. 頸椎椎椎間関節ブロック
    • 適応・禁忌・合併症・手技について説明できる.(L-3)

E. 脊髄くも膜下麻酔

  • 脊髄くも膜下腔の解剖を説明できる.(L-1)
  • 脊髄くも膜下麻酔の適応,手技,禁忌,合併症を説明できる.(L-2)
  • 脊髄くも膜下麻酔の正確な体位をとれる.(L-2)
  • 脊髄くも膜下穿刺ができる.(L-2)
  • 患者の状態に適した局所麻酔薬や比重と量を選択できる.(L-3)
  • 麻酔域を適切に評価でき、過剰麻酔域の際の臨床徴候と処置について説明できる.(L-3)
  • 合併症を起こしやすい条件およびその予防法について列挙できる.(L-3)
  • 脊髄くも膜下麻酔後頭痛について説明できる.(L-2)

F. 硬膜外ブロック

  • 硬膜外腔の解剖を説明できる.(L-1)
  • 硬膜外ブロックの適応,手技,禁忌,合併症を説明できる.(L-2)
  • 硬膜外ブロックの正確な体位をとれる.(L-2)
  • 硬膜外穿刺ができる.(L-2)
  • 腰部硬膜外ブロックを実施できる.(L-2)
  • 胸部硬膜外ブロックを実施できる.(L-2)
  • 仙骨硬膜外ブロックを実施できる.(L-2)
  • 患者の状態に適した局所麻酔薬とその量を選択できる.(L-3)
  • 偶発的くも膜下穿刺が起きた場合の臨床徴候と処置について説明できる
  • 全脊髄くも膜下麻酔が起きた場合の臨床徴候と処置について説明できる.(L-3)
  • 硬膜外血腫を起こしやすい条件およびその予防法について列挙できる.(L-3)
  • 硬膜外血腫の診断および治療法を説明できる.(L-3)
  • 硬膜外膿瘍を起こしやすい条件およびその予防法について列挙できる.(L-3)
  • 硬膜外膿瘍の診断および治療法を説明できる.(L-3)

G. その他のブロック

  • その他の頻度の高い神経ブロックの適応、手技、禁忌、合併症を説明できる.(L-3)
    • 神経根ブロック
    • 腹腔神経叢ブロック
    • その他

IV. 区域麻酔と周術期抗凝固・抗血小板薬

  • 抗凝固薬・抗血小板薬の種類, 薬理作用が説明できる.(L-2)
  • 周術期における抗凝固薬・抗血小板薬の問題点について説明できる.(L-2)
  • 周術期における抗凝固薬・抗血小板薬の中断・再開について説明できる.(L-3)

V. 各種手術と区域麻酔の実践

  • 各種手術の麻酔管理において病態や手術術式に応じて適切な区域麻酔を選択・実施できる.(L-3)
  • 各種手術の術後鎮痛において病態や手術術式に応じて適切な区域麻酔を選択・実施できる.(L-3)

VI. 慢性痛管理と区域麻酔の実践

  • 慢性痛治療において病態に応じて適切な区域麻酔を選択・実施できる.(L-3)

VII. がん性痛管理と区域麻酔の実践

  • がん性痛治療において病態に応じて適切な区域麻酔を選択・実施できる.(L-3)

ページ先頭へ